ショークが、大きく影響を受けた代表的な作家の一人に、フェリックス・ゴンザレス=トレスがいる。
ショークが、大きく影響を受けた代表的な作家の一人に、フェリックス・ゴンザレス=トレスがいる。
彼が行ったのは、パブリックなもの(公共性)とプライベート(私生活)のつなぎ目として存在しながら、いつか消滅していく、しかも、消滅することによってますます存在感を強くする、身体の表現だ。90年代には、一見ミニマリズム彫刻のように見えながら、実は長方形の白い紙を一枚ずつ積み上げて柱状にした彫刻だった。そして、観客がその紙を一枚ずつ持ち帰っていくため、作品は毎日高さを変えていく。それは、時間の中で変化する彫刻であり、消滅し、観客に分け与えられて世界に散らばる彫刻だった。
ホームエレクトロニクスカフェのアート表現は、〝家〟や〝地区〟という空間全体にオブジェやポスター、ビデオ音響装置を置いて、空間を構成し変化・異化させ、空間全体を作品として体験させる〝インスタレーション〟というアプローチであり、空間全体が作品であるため、観客は作品を鑑賞するというより、観客自体もキャストとして作品に参加し、空間全体を「体験」することになる〝フェスティバル〟というアプローチである。〝家〟と〝キャスト〟との化学反応により、〝家〟と〝地区〟という作品の表情は毎日変わる。観客がその空間を体験(見たり、聞いたり、感じたり、考えたり)する方法をどのように変化させるかを要点とするアート手法である。
〝家〟と〝地区〟をギャラリーとして見立て、アップサイクルされた〝家電〟や〝家具〟などのアッサンブラージュを寄せ集め、不作為に配置されている空間を作るのである。そして、観客を〝家〟と〝地区〟という主観的な作品のなかへ呼び込んで行く。ホームエレクトロニクスカフェの特徴は、〝できすぎず、もてなさず〟という侘び寂びの未完全の美意識によるリ・コンシャスなアーツアンドクラフツが展開されていく。こうして従来のアートは難解なものという固定概念や、アートに対する障壁を取り除くことにより、観客の想像力を触発し、新たな主体へと変化させていくのである。
それは、マイク・ケリーの幼児退行性の表現ともオーバーラップする。「技術の習得や社会的成功に向けて努力しない」という〝無力〟によるアート表現であると言える。
HECPには、「芸術」をスタティックな、シンボル的な、モニュメンタルな造形物として捉えるのをやめ、人間の動的なアクションのなかで考え世界中で群発的に圧倒的なパラダイムシフトを呼び起こすための強固で絶対的な「普遍的正義概念」が存在している。政治や思想、芸術のサブカルチャーやニヒリズムの表象なき評論や情緒的思考との差別化を行うことが、世界における文化や伝統、宗教を乗り越えた、真の友愛や連帯を包摂した「共同体」のリアリティーを呼び起こすことが出来るのである。
0コメント